マンションや戸建住宅など中古物件の販売の際、売り主から買い手へ交付するのが告知書です。売り主しか知りえない情報を買い手に報告するためのものですが、売り主側からしても後々のトラブルを避けるため、提出した方が利益になります。
中古物件の売買でしばしば問題になるのが瑕疵です。瑕疵とは一般に備わっているはずの機能が欠陥などから備わっていないことを指します。売り主が知らない瑕疵は法律上「隠れた瑕疵」とされ、売り主は一定の瑕疵担保責任を負わなければなりません。
民法では買い手が瑕疵の存在を知ってから1年以内、宅地建物取引業法では売り主が不動産会社の場合、引き渡しの日から2年以上としています。買い手から瑕疵担保責任を追及されれば、対応しなければなりません。
瑕疵の存在を知っていて告げなかったときは、瑕疵担保責任に該当しませんが、一種の債務不履行と判断され、売り主の責任が問われます。後々のトラブルの種となりそうな事実は、買い手にきちんと報告しておく方が良いのです。
国土交通省も「売り主にしか分からない事項を告知書に記入し、買い手に渡しておくことでトラブル防止に役立てるのが望ましい」と告知書の提出を推奨しています。
告知書は物件情報等報告書、不動産情報告知書などとも呼ばれます。中古物件は経年劣化や機能低下、不具合が生じていることがあります。これらの情報に近隣の状況や過去の経過などを加え、売り主が分かる範囲で具体的な情報を示すものが告知書です。
土地 | 境界の確定状況 |
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過去の所有者と利用状況 | |
土地汚染など瑕疵の存否 | |
周辺の過去および現在の利用状況 | |
建物 | 新築時の設計図書と増改築、修繕の履歴 |
耐震診断の有無 | |
建物の瑕疵の存否 | |
その他 | 新築、増築を担当した不動産業者 |
以前の所有者から引き継いだ資料 |
不動産の業界団体などが告知書のサンプルを作成していますから、それを基に回答していけば問題ありません。
具体的な項目としては、土地関係だと境界の確定状況、過去の所有者と利用状況、周辺の土地の利用状況などを記入しておくべきです。建物関係では、新築時の設計図書、増改築や修繕の履歴、耐震診断の有無、建物の瑕疵の存否など、その他では、以前の所有者から引き継いだ資料、新築や増改築に関係した不動産業者名を記入すれば良いでしょう。
はっきりしない部分や知らない個所は「分からない」と率直に記入しておいて構いません。売り主も専門家ではありませんから、自分の分かる範囲で誠実に回答してあげれば良いのです。
偽りを書いたり、隠したりして責任を問われた場合、行政官庁や業界団体から是正を求められることがあります。最悪の場合は裁判になり、損害賠償することにもなりかねません。