物件を探す前に、だいたいの予算額を決めておくことが大切です。多くの場合、自己資金だけで家やマンションを購入することができないため、住宅ローンを利用することになります。しかし、住宅ローンは常に必要な額を借りられるわけではありません。借入限度額を把握し、無理なく返せるように考えておかないといけません。
住まいを買うときは物件の購入費がすべてではありません。それ以外にも登記費用、税金、住宅ローン、内装や家具の購入費、引っ越し費用などが必要となります。仲介物件だと不動産会社への手数料がかかるうえ、新築マンションは修繕積立金として数十万円が必要になることもあるのです。中古物件をリフォームするなら、リフォーム費用を見込まなくてはいけません。
これらの合計額が住宅購入費です。これを自己資金とローンでまかなうことになります。自己資金から購入後の生活に必要な額とすぐに払わなければならない諸費用を差し引き、残りの額を頭金に充てます。頭金以外をローンで補います。
といっても、銀行など金融機関が希望通りにローンを組ませてくれるわけではありません。金融機関が年収などを審査し、貸せると判断した人に貸せる額のローンを組んでくれます。この程度なら滞りなく返済できると判断した額しか貸してくれないわけです。
それでは、金融機関はいくら貸してくれるのでしょうか。その目安を計算する根拠となるのが返済負担率です。年収に対する年間返済額の割合を指し、金融機関それぞれが独自の基準を設けています。
住宅金融支援機構の全期間固定金利住宅ローン「フラット35」では、年収400万を境にして30%以下、35%以下に分けています。例えば、年収400万円だと、400万円×35%=140万円が年間返済額の上限です。これを上回る返済額のローンは組むことができません。
年収400万円未満 | 400万円以上 | |
---|---|---|
返済負担率 | 30%以下 | 35%以下 |
出典:住宅金融支援機構「フラット35の利用条件等」
この年間返済額の上限と金利、返済期間に基づき、借りられる額が分かります。フラット35の場合は実際の金利がそのまま審査金利となりますが、一般の銀行だと適用金利より高い審査金利を設定しています。
フラット35の金利を1.54%、銀行を適用金利0.7%、審査金利3.5%として計算すると、フラット35の方が借入限度額を大きくできることが分かります(表2参照)。ただ、生活に支障の出ない範囲に返済額を抑えるようにすることを忘れてはなりません。
返済負担率 | 借入限度額 | ||
---|---|---|---|
銀行 | 35%以内 | 2 | 820万円 |
フラット35 | 35%以内 | 3 | 780万円 |
(注)年収400万円、35年返済、銀行は適用金利0.7%、審査金利3.5%、フラット35はともに1.54%で試算、限度額は10万円以下切り捨て
住宅ローンを借りるときに注意すべきもう1つの点は、正社員のサラリーマンに比べ、自営業者は審査が厳しくなることです。会社員の年収は額面で判断されますが、自営業者は収入から費用を差し引いた所得で審査されます。その結果、同じ額の収入でも借りられる額が少なくなってしまいます。
派遣社員や契約社員は雇用期間が短いため、ローンの対象外とされることが多くなっています。
返済中の教育ローンや自動車ローンがあると、その分が借入可能額から差し引かれます。年収400万円の方の月当たり返済額の上限が11万6,600円でも、毎月3万円のローンを払っていると8万6,600円と審査されるのです。住宅ローンを借りる場合、その前に他のローンを整理しておく必要があるでしょう。