訪日外国人観光客の増加とともに、マンションの1室や戸建住宅に有料で観光客を宿泊させる民泊が、各地で盛んになってきました。所有している物件を賃貸に出すだけでなく、民泊施設として利用する手もあります。大阪市の特区民泊を例に取り、注意点を見ていきましょう。
大阪市は2016年10月末から国家戦略特区(旅館業法の特例)を利用して市条例に基づく民泊を解禁しました(大阪府 民泊サービスについて)。民泊を開業できる場所は建築基準法でホテルや旅館の建築が可能な用途地域です。
具体的には
となっています。簡易宿所の許可を取った民泊の場合も同様です。これ以外の用途区域だと市の許可が出ませんから、市役所で事前に確かめておきましょう。
マンションの場合は管理組合の規約で「民泊許可」となっていることが条件になります。管理規約に「専ら住宅として使用」と書かれている際、大阪市は可能とも不可能とも書かれていないと判断しています。
このため、民泊許可の文言が管理規約に見当たらない場合、管理組合から民泊使用の承諾書をもらわないといけません。管理規約に「民泊不許可」の文言がある施設は、特区民泊の許可を受けられません。
居室の構造にも制限が設けられています。居室の床面積が25平方メートル以上で、台所と浴室、トイレ、洗面所を備えることなどです。この場合の床面積は壁芯面積で計算します。壁や柱の厚みの中央部分から計測した面積です。
居室の床面積が25平方メートル以上 |
出入り口と窓の錠 |
換気、採光、照明、防湿、冷暖房、排水施設 |
台所、洗面所、トイレ、浴室 |
寝具、テーブル、椅子、調理器具の完備 |
台所と洗面所を別に備え、水道水など飲用に適する水の供給 |
調理器具は電子レンジ、コンロなど加温できるもの |
清掃器具として掃除機、ごみ箱、雑巾 |
出典:国家戦略特区法施行令、大阪市民泊条例
この床面積には台所や浴室、トイレ、洗面所、クローゼットが含まれますが、ベランダは入りません。国家戦略特区法施行令には都道府県知事が例外を認める条項があるものの、大阪市は適用しない方針です。
開業すると、宿泊客の滞在者名簿を作成しなければなりません。外国人はパスポート、日本人は免許証などで本人確認すべきとしています。このほか、旅館などと同様に宿泊客の到着日時、出発日時なども記入するよう求められています。
近隣に迷惑をかけないため、ごみ出し基準の徹底を図り、夜間に宿泊客が大騒ぎしないよう気をつけなければなりません。開業に当たっては近隣に説明会などで周知することも必要です。さらに、近隣住民の苦情を受け付け、24時間体制で速やかに駆けつけることも求められます。
このほか、消防法や水道基準への適合など細かい規則が定められています。市のホームページやパンフレットで大まかな知識を手に入れたうえで、市役所を訪ねて相談した方が良いでしょう。