様々な土地活用方法

相続や過去に購入したなどの理由で土地は保有しているけれど、現在は土地を利用しないままで固定資産税だけを支払っているなど、負の遺産と悩まれている方も多いです。昨今「空き家の活用」と国や各自治体が対策を検討しており、「土地の活用」は地域問題となってきています。

では実際、の土地を活用する方法としてどのような方法があるかご存知でしょうか?「マンション経営」「コインパーキング運営」などのキーワードは皆さん見聞きした事があると思いますが、「調べたいけど時間が無い」「いろいろ種類があるから面倒」「初期投資がかかる」「収入が見込めるの?」と、土地活用の種類や方法を詳しく理解されていない方が多いのではないかと思います。

そんな方のために、ここでは様々な活用方法の概要とメリット・デメリットをまとめて解説します。是非とも土地活用の検討にお役立てください。

1.初期投資を抑えた土地活用

1-1.定期借地

土地所有者が「定期借地権」と言う権利を利用し土地活用を行う手法です。定期借地の最大のメリットは、初期投資(借入れ)をする必要がないことです。アパート経営やビル経営による土地活用の手法とは異なり、土地所有者が借地人に土地を貸すだけです。建物の建設費用や維持管理費も借地人が負担するので、維持管理費用も必要無く、安定的な収入を確保する事ができます。

しかし、一点注意が必要なのは「長期間での契約となる」点です。最長50年の契約になりますので、50年間収入が確保できるメリットもありますが、契約期間中は土地の売却や他目的の利用もできないデメリットもありますので、内容を充分理解して契約する必要があります。

定期借地権には下記の3種類があり、借地人の利用目的(マンション運営やコンビニなどの店舗経営など)と土地所有者の土地運用の考え方を整理した上で、契約内容を決定する必要があります。

<借地権の種類>
一般定期借地権
借地期間は50年以上、期間満了時に権利が消滅する借地権
建物譲渡特約付借地権
借地期間は30年以上、期間満了時に土地所有者が借地人から建物を買い取ることで権利が消滅する借地権
事業用定期借地権
借地期間は10年以上、居住用ではなく事業のために土地を貸す借地権

1-2.駐車場経営

駐車場経営は、「平面駐車場」・「立体駐車場」などの規模や「月極」・「コインパーキング」などの種類が様々ありますが、比較的初期投資を低コストで始める事ができる土地活用方法です。また、借地権や地上権が発生しないため「利用者との権利関係のトラブルも起きづらい」、また「いつでもやめる事ができる」ので、短期間での土地活用に向いています。

しかし、駐車場利用者がいなければ駐車場経営は成り立たないため「土地の広さや形」「周辺環境を考慮」した上で、価格や設備など「どのような駐車場が適しているか」を十分に検討する必要があります。

では、駐車場経営にはどのような運用形態があるのでしょうか?下記に運用の形態と概要を説明します。


1)月極駐車場

駐車枠1台ごとに賃貸借契約を結び1カ月毎の賃料を受ける運営形態で、安定した収入を得られます。しかし、駐車場の整備などの初期投資はオーナーが負担する必要があります。

管理委託方式

オーナーが運営する駐車場の一部業務(賃料集金・点検・清掃など)を管理会社へ委託し、オーナーの賃料収入から管理業者に管理費を支払う方式です。

一括借上方式

管理業者がオーナーから駐車場設備を一括して借り受け、利用者の募集など含めた全ての業務運営を行い、管理業者がオーナーへ「賃料と売上一部」を支払う方式です。


2)コインパーキング

利用料金が時間毎に加算される形式で、無人機の設置により無人運営も可能なため、狭い土地でも1 台のスペースから開業する事ができ、稼動率によっては月極よりも賃料収入が見込めます。

しかし、立地やパーキングの競合状況などの周辺環境で稼働率が左右され、収支の見込みが立たないケースもあるため、周辺エリアのニーズを加味した運用検討(駐車料など)が必要です。

土地賃貸方式

オーナーが所有する土地を管理業者に一括で貸出し、駐車場の整備などの初期投資や運営費用は全て管理業者が負担する方式です。

自己経営方式

オーナーが駐車場設備など初期投資を負担し、オーナーが運営する駐車場の一部業務(料集金・点検・清掃など)を管理業者に委託する方式です。

1-3.ソーラー経営

土地保有者がソーラー発電設備を整備し、ソーラーパネルによって発電された電力を電力会社へ売電する方法です。「固定価格買取制度」により、電力会社と10年又は20年の間決められた価格で売電する契約ができるため、土地所有者は初期投資がかかりますが、電力会社から売電による安定した収入が得られる方法です。

既にソーラー発電経営をされている方は、蓄電池設備も併せて導入し電力を全て売電するのではなく自宅での消費にも利用している方もいます。これは、日中に蓄えた電気を夜間の自宅での電気消費に利用し、毎月の電気料金の低減を図る方法です。日中の発電時に余剰電力は売電もしているため、電力会社からの収入も安定的に受けられるメリットがあります。

ソーラー発電は、設備を整備すれば自動的に発電してくれるので、維持管理に大きな手間はかかりませんが、土地の広さや形、地盤により初期費用が大幅に変動する点や日照時間などにより発電量が増減する点など、土地環境により収入の変動が大きいため、事前に環境を調査する必要があります。

また、近年ソーラー発電の設置が増えたことにより買取価格が下降傾向であり、経営収支を検討する際に大きく影響しますので、買取価格の動向は注意する必要があります。

1-4.トランクルーム経営

トランクルーム経営は、駐車場経営と同様に比較的早く運用を開始することが可能です。トランクルームは、「モノを保管する場所」を提供するサービスですので、設備投資は少なく長期で契約される利用者が多いのが特徴です。また、近年「居住スペース」と「収納スペース」を機能毎に分ける考え方が広まってきており、利用者の増加にあわせて都心部を中心にトランクルームの数も年々増加傾向にあります。

では、トランクルーム経営にはどのような形態があるのでしょうか?下記に型式・方式毎に概要を説明します。

1)型式

「トランクルーム」の型式には以下の2通りがあります。利用者が求める設備や広さなどは、それぞれ異なりますので、提供エリアの利用者ニーズを踏まえ、どの型式で提供するかを判断する必要があります。

コンテナ型
土地に収納コンテナを設置し、コンテナ一つ一つを貸出す型式です。既に土地を保有している方は、コンテナを設置する等の少ない投資で開業することができ、利用者からの賃料収入が得られます。
ルーム型
ビルのフロアにスペースが仕切られ、そのスペースを貸出す型式です。マンション経営していた方がリフォームによりトランクルーム経営に切り替える方もいます。コンテナ型に比べ「セキュリティ」「保管環境」などの面で優れた設備を提供でき、都心部では利用者のニーズが多いです。
2)運営方式

トランクルームは24時間365日運営の為、個人で運営するには様々なリスクが伴います。管理会社と協力して運営する方式が一般的です。運営方式には以下の3通りあります。


リースバック方式

建物やコンテナは土地所有者の負担で整備し、設備と運営の全てを運営業者に一括して委託する方式です。


業務委託方式

建物やコンテナは土地所有者の負担で整備し、経営や管理業務の一部を運営業者に委託する方式です。


事業用定期借地方式

土地所有者は業者に土地を定期借地するだけで、トランクルーム設備の整備及び運営を運営業者が全て負担する方式です。

2.相続税対策目的の土地活用

2-1.賃貸住宅経営(賃貸アパート経営・賃貸マンション経営)

「相続税対策に土地を有効活用」するという考え方は、30年から40年前より一般的に行われてきました。この根拠は、国の相続税の考え方が影響しています。現金や未活用の土地を相続すると、相続時の税対策に一切のメリットがなく、現金は満額/土地は評価額が相続税の対象となります。しかし、相続する土地に建物や賃貸住宅が建っている場合は、土地は評価額の2割引/建物は評価額の6割引の価格が相続の対象となり、また建物のローンが残っている場合は、借金を相続したことになるため更に相続税の対象金額が下がります。

このような優遇があるため、土地のみを相続するよりも賃貸アパートやマンションを建てて「不動産経営」を相続した方が相続税対策としては有利なのです。節税対策として、賃貸経営はメリットがありますが、運用のリスクはありますので注意する必要があります。

以下に賃貸住宅の経営方法の各方法のメリット、デメリットを説明します。

賃貸住宅の経営方法(各管理方法のメリット・デメリット)

賃貸住宅の経営は、土地・建物の初期投資は全てオーナーが負担した後、運用業務を誰が実施するかで3つの方法にわかれます。賃貸経営は入居者に満足される日々の管理/運営が重要ですので、オーナーとしての関わり方を決め、不動産業者やマンション管理業者等と協力し最適な方法を選択する必要があります。


自己管理

入居募集以外の業務を全てオーナーが管理する経営方法です。

メリット
業者への委託費など、賃貸経営の運用コストがかからない
集金時などにオーナーと入居者がコミュニケーションをとることができる
デメリット
維持管理(集金・掃除・メンテナンス・利用者からの問合せ対応)作業が発生する
空室時の家賃収入保証が無い

一般管理(集金管理)

アパートの管理業務の一部を業者に委託する方法です。入居者の審査や家賃集金、掃除など、委託内容により業者がサポートする運営方法で、オーナーから委託費を業者へ支払います。

メリット
入居審査及び集金管理業務などトラブルが発生する可能性がある業務を委託できる
清掃などの管理負担が大きい業務を委託できる
デメリット
空室時の家賃収入保証が無い。

一括借上(サブリース)

入居者募集から日々の維持管理・問合せ対応まで一括で業者に委託する運営方法です。契約期間中は業者がすべての業務を行います。

メリット
空室があっても全室分の家賃収入は保証される。維持管理の手間やコストはオーナーには発生しない。
デメリット
家賃価格を自分で決められず、業者への手数料は一般管理よりも割高です。

2-2.高齢者施設経営(老人ホーム経営・サ高住経営)

土地活用において、近年増加傾向にあるのは、老人ホームやサービス付高齢者住宅の経営です。これは、少子高齢化が国内で更に加速していくことが予想されているため、需要の拡大を見据えての土地活用方法であると言えます。

土地活用と併せて「社会貢献・地域貢献」につながり、またサービス高齢者住宅の建設時には補助金が出る事から、ある程度まとまった土地を保有されている方が検討するケースが増えています。高齢者施設で土地活用を実施するにはいくつかの方法があります。以下に3つの方法を記載します。


テナント型

民間の介護サービス会社と協力し、建物やデイサービスセンターなどの併設施設を含めた建物をオーナーが建設し、業者が借り受ける方式です。オーナーは、賃料の他に併設施設分の収益の一部が収入となる為、安定した収入が見込めます。しかし、長期間物件を貸出すため、施設利用率によっては収入に変動が出る点を注意する必要があります。


委託型

物件内に事務所を作り、介護会社に事務所のみ借りてもらい、入居者の、状態把握・生活相談サービス等の各種サービスを介護会社に委託します。オーナーは、住居賃料の他に事務所賃料などの安定した収入を得ることができます。しかし、施設利用率によっては収入に変動が出る点を注意する必要があります。


自己経営型

オーナーが自ら経営者となり運営する方式です。オーナー自ら法人登録し、登録した企業が介護サービスを提供する方法です。収益としては、オーナー及び設立した企業に全ての収入が得られますが、人材の雇用、入居者の募集や確保、維持管理などがオーナーの責任となります。また新たな事業化申請において、コンサル企業等の協力を仰ぐ必要があり手間がかかります。